朝晩の冷え込みが増えるこの時期は、屋外配管や冷却水配管、屋上の給水管などの凍結対策を点検する好機です。凍結防止ヒーターは建物を守る大切な設備ですが、設定や配線の状態によっては、必要のない時間帯にも電気を使い続けていることがあります。今回は、この「見えにくい電力」の見直し方を整理します。
凍結防止ヒーターとは
配管に巻き付けて電気で温める線状のヒーター(ヒートトレース)や、機器まわりのヒーターの総称です。外気温が下がったときに配管内の水が凍って膨張し、配管や機器が破損することを防ぎます。サーモスタット(温度で入り切りする制御器)で動くものが一般的で、屋外の給水・給湯配管、冷却塔まわり、室外機のドレン配管などに使われます。
電気代が膨らみやすいポイント
- 作動温度の設定が高すぎる:設定が実際の凍結リスクより高いと、冷え込みが浅い日にも通電します。
- センサーの位置が不適切:日陰や風の通り道にある、または日向で外気より暖かくなる場所にあると、入り切りがずれます。
- 保温材の劣化・欠損:保温が傷んでいると熱が逃げ、ヒーターが長く通電します。濡れた保温材は特に熱を奪います。
- 使っていない系統の通電:改修や用途変更で使わなくなった配管のヒーターが、そのまま残っていることがあります。
- シーズン外も電源が入ったまま:入り切りの管理がなく、通年で電源が入っている例があります。
点検の進め方
- 台帳をつくる:ヒーターの設置場所、系統、定格容量(W/m×長さ)、制御方式を図面と現地で突き合わせます。
- 電気の使われ方を確認する:分電盤で回路ごとの電流を確認します。計量していない場合は、測定器の簡易計測でも傾向はつかめます。
- 保温と設定を見直す:保温材の傷みを補修し、サーモスタットの設定温度とセンサー位置を確認します。
- 不要な系統を整理する:使っていない配管は、水抜きなど別の凍結対策も含めて止められるか検討します。
なお、凍結防止は安全に関わる設備です。止める・設定を下げる判断は、地域の最低気温や配管の条件を踏まえ、施工者や設備管理者と確認したうえで行ってください。省エネのために凍結リスクを高めては本末転倒です。
ZEBとの関係
標準入力法では、タイマーやサーモスタットで自動制御され、不要なときに止まることが明確な凍結防止ヒーターは評価の対象外です。そのため、凍結防止ヒーターの電力は設計値には現れにくくなります。設計どおりに運用しているのに電気の使用量が合わないとき、こうした「計算の外」の負荷が理由のひとつになることがあります。竣工後の運用で電力量を見る際は、計算に含まれる設備と含まれない設備を分けて把握しておくと、原因を切り分けやすくなります。
寒波が来る前の今、台帳づくりと現地確認から始めてみてはいかがでしょうか。
想定読者:建物オーナー、自治体の施設担当者、設備管理者・設計者(寒冷期の設備管理や運用後の電力量把握に関わる方)
注:本コラムは公開されている資料に基づく概説です。個別の建物への適用は、設計者や専門家にご相談ください。
参照
- 国土交通省 国土技術政策総合研究所・国立研究開発法人 建築研究所「エネルギー消費性能計算プログラム(非住宅版)標準入力法 入力マニュアル Ver.3.10」(2026年4月)、建築研究所「建築物のエネルギー消費性能に関する技術情報」に掲載:https://www.kenken.go.jp/becc/building.html (評価の対象外となる設備〔融雪・凍結防止〕:p.vi〜vii)