朝晩が冷え込み、そろそろ暖房や給湯の負荷が立ち上がる時期です。ボイラーを使う建物では、運転開始前の点検が省エネの分かれ目になります。今回は、点検記録のなかでも見落とされがちな「空気比」と「排ガス温度」という二つの数字の読み方をご紹介します。
空気比とは
燃料を燃やすには空気が必要です。燃料を完全に燃やすのに理論上必要な空気量に対して、実際に送り込んだ空気量の比を「空気比」といいます。空気比が1.0に近いほど無駄が少ない状態です。ただし空気が足りなければ不完全燃焼を起こして危険なため、実際には一定の余裕をもたせて運転します。
問題は空気が多すぎる場合です。余分な空気は炉内で温められたまま煙突から出ていくため、熱の捨て損になります。燃焼調整のずれ、バーナーや送風機まわりの汚れ、炉壁や煙道からの空気の侵入などで、気づかないうちに空気比が上がっていることがあります。
排ガス温度が語ること
もう一つの目安が、煙突に向かう排ガスの温度です。排ガス温度が高いということは、それだけ熱を捨てているということです。伝熱面にすすやスケール(水あか)が付着すると熱が水に伝わりにくくなり、排ガス温度が上がります。一般に、排ガス温度が下がるほどボイラー効率は上がる傾向にあります。ただし、排ガス温度を下げすぎると、排ガス中の水分が結露して煙道などが腐食する(低温腐食)おそれがあります。温度の管理は、メーカーの推奨範囲内で行ってください。
シーズン前に確認したい点
- 前年の燃焼測定の記録(空気比、排ガス温度、酸素濃度)と比べて悪化していないか
- 燃焼調整が、現在の負荷に合った状態になっているか
- 伝熱面の清掃、スケール対策、水処理は適切か
- 蒸気や温水の配管・バルブの保温が劣化していないか
- 必要以上に高い蒸気圧力・温水温度で運転していないか
いずれも、特別な設備投資をせずに取り組める項目です。燃焼調整や清掃は専門業者に依頼するのが安全です。なお、ボイラーの空気比については、省エネ法に基づく経済産業省告示「工場等におけるエネルギーの使用の合理化に関する事業者の判断の基準」で、守るべき「基準空気比」と努力目標の「目標空気比」が、燃料の種類や設備の規模ごとに定められています。自施設のボイラーに当てはまる値は、判断基準の本文で確認してください。
設備更新を考えるとき
ボイラーの効率が調整で改善しきれない場合は、高効率機への更新や、小型ボイラーの台数制御、ヒートポンプ給湯・熱源への置き換えも選択肢になります。その際は、現状の燃料使用量と燃焼測定の記録があると、更新による削減効果を見積もりやすくなります。ZEBを目指す建物でも、熱源の運用実態を把握しておくことは、設計値と運用実績の差を小さくする第一歩です。
まずは今シーズンの運転開始前に、昨年の記録を引き出すところから始めてみてはいかがでしょうか。
想定読者:ボイラー・温水ヒーターを持つ施設の建物オーナー、管理担当者、自治体の施設担当者
注:本コラムは公開されている資料に基づく概説です。個別の設備の燃焼調整や管理値の設定は、メーカーや専門業者にご相談ください。
参照
- 経済産業省告示「工場等におけるエネルギーの使用の合理化に関する事業者の判断の基準」(資源エネルギー庁掲載):https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/overview/laws/data/pdf_001.pdf (ボイラーの基準空気比・目標空気比)