「設定は22℃なのに、フロアが寒い」「暖房が効きすぎて暑いという声と寒いという声が同時に来る」。こうした相談では、空調機や断熱ではなく、室温を測るセンサー(温度の検出器)の位置や精度が原因だったという例が少なくありません。空調や制御は、センサーが示す値を「正しい室温」と信じて動くため、測る側にずれがあると、その分だけ過剰な暖房や冷房につながることがあります。暖房を本格的に使い始める前に、確認しておきたいポイントをまとめます。

センサーはどこにあるか

室内の温度は一様ではありません。暖房時は暖かい空気が上にたまり、窓際や外壁際は低く、日の当たる壁際は高くなります。そのため、次のような場所にセンサーがあると、実際の居住域(人がいる高さ)の温度と離れた値を拾うことがあります。

  • 吹出し口の近くや、空調機の吸込み口(リモコンの内蔵センサーも含む)
  • 日射が当たる壁面、窓際、出入口の近く
  • 厨房機器、コピー機、サーバーなど発熱する機器のそば
  • レイアウト変更後に、棚や間仕切りの陰に入ってしまった位置

ずれは時間とともに起きる

センサー自体も、長年の使用で表示と実際の温度がずれることがあります。ずれの大きさは機種や使用年数によって異なり、一概には言えません。また、前回の点検記録に校正(基準となる温度計と比べて値を合わせる作業)の履歴がない場合、ずれがあるのかどうか自体が不明な状態になります。

暖房前にできる確認

  1. 基準の温度計と並べて比べる:校正済みの温度計や、信頼できるデータロガー(温度を一定間隔で記録する小型の機器)を、センサーの近くと居住域の高さに置き、数時間〜1日記録して表示値と見比べます。
  2. 設置位置の図面や写真を残す:どの系統のセンサーがどこにあるのかを整理しておくと、苦情が出たときの切り分けが早くなります。
  3. ゾーン(制御区画)との対応を確認する:1つのセンサーが、性質の異なる複数の部屋(日向側と日陰側など)を代表していないかを見ます。
  4. ずれが見つかったら:中央監視(BEMSなど)の補正値で調整できる機種と、機器の交換や再校正が必要な機種があります。判断は、メーカーや保守業者に相談してください。

小さなずれでも見過ごさない

たとえば、センサーが実際より低い温度を示していれば、暖房は必要以上に続き、逆に高く示していれば、利用者が寒さを感じることになります。どちらの場合も、設定値の見直しだけでは解決せず、測る側の確認が必要になります。

ZEBとの関係

ZEBの設計では、適切な室温制御を前提に一次エネルギー消費量を計算します。竣工後に制御の前提となる温度の測定が正しくなければ、せっかくの高効率な設備も本来の性能を発揮できません。運用調整(コミッショニング)の項目として、センサーの位置と精度の確認を組み込んでおくと安心です。

まずは、苦情の多い部屋のセンサーの位置を確かめ、簡易な温度記録から始めてみてはいかがでしょうか。


想定読者:建物オーナー、自治体の施設担当者、設備管理者、設計者

注:本コラムは、建築環境工学・省エネ設計の一般的な知見に基づく概説です。個別の建物への適用は、設計者や専門家にご相談ください。