省エネ計算書やBELSの評価書を開くと、エネルギーの量が「MJ/年」や「GJ/年」で書かれています。電気代でもkWhでもない見慣れない単位ですが、ここには制度の考え方がそのまま表れています。

使った電気より大きな数字になる理由

建築物省エネ法の計算では、電気1kWhを9,760kJ(約9.76MJ)の熱量に換算します。電気そのものの熱量は3.6MJですから、2.7倍ほどに膨らむ勘定です。差は、発電所で燃料を燃やすときのロスと送電のロスです。建物に届いた電気の量ではなく、それを作るために元でどれだけ燃料を使ったかで数える。これが「一次エネルギー」です。

この換算があるおかげで、電気とガスと灯油を足し合わせられます。設計一次エネルギー消費量は、空調・換気・照明・給湯・昇降機の消費量を合計し、太陽光発電やコージェネレーションによる削減分を差し引いて求めます(OA機器などの「その他一次エネルギー消費量」は別枠で、ZEBやBEIの判定には含みません)。熱源を電化するかガスにするかを同じ土俵で比べられるのは、この仕組みがあるからです。

「いつ使ったか」で重みが変わる制度もある

一方、省エネ法の定期報告では、電気の重みが時間帯で変わります。系統電気を換算する「電気需要最適化係数」は、再生可能エネルギーの出力制御が行われている時間帯は3.60MJ/kWh、需給状況が厳しい時は12.2MJ/kWh、それ以外は9.40MJ/kWhと定められています。太陽光が余っている昼間の1kWhと、電力が足りない日の1kWhでは、評価が3倍以上違うということです。

ここから読み取れるのは、建物側の打ち手が「減らす」だけではないということです。蓄熱や蓄電、デマンド制御で使う時間をずらすことにも、制度上の評価がついています。ただし建築物省エネ法のBEI(省エネ性能を表す指標)は年間の固定係数で計算するため、時間をずらしてもBEIは動きません。制度ごとに物差しが違います。

三つの数字を混ぜない

最後にひとつ。一次エネルギー消費量は、CO2排出量でも光熱費でもありません。BEIが半分になっても電気代が半分になるわけではなく、再生可能エネルギー由来の電気に切り替えてもBEIは変わりません。いまどの数字で議論しているのかを確かめてから話を進めると、社内やチーム内の検討が噛み合いやすくなります。


想定読者:建物オーナー、自治体の営繕・施設管理担当者、設計実務者、省エネ法の定期報告を担当されている方

参照・注記:電気の換算係数9,760kJ/kWhは、国土交通省国土技術政策総合研究所・建築研究所「平成28年省エネルギー基準 一次エネルギー消費量算定方法の解説(非住宅建築物)」(https://webpro-nr.github.io/BESJP_EngineeringReference/index.html )に基づきます。設計一次エネルギー消費量が空調・換気・照明・給湯・昇降機の5設備の合計に「その他一次エネルギー消費量」を加え、太陽光発電・コージェネレーション設備による削減量を差し引いて定義される点は、同研究所「エネルギー消費性能計算プログラム(非住宅版) 標準入力法 入力マニュアル Ver.3.7(2024年10月)」(https://building.lowenergy.jp/file/webprov3_manual_20241001.pdf )に基づきます。ZEBの判定では「その他一次エネルギー消費量」を対象外とする点は、環境省ZEB PORTAL「よくある質問」(https://www.env.go.jp/earth/zeb/wish/04.html )によります。電気需要最適化係数の3.60/9.40/12.2MJ/kWhという値と適用時間帯の区分は、資源エネルギー庁 省エネポータルサイト「定期報告書・中長期計画書」(https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/factory/report/index.html )に基づきます。1kWh=3.6MJは単位の定義による換算値です。個別の物件・事業者の算定方法は、最新の告示および手引きでご確認ください。