2026年4月から、延べ面積300㎡以上2,000㎡未満の「中規模」非住宅建築物の省エネ基準が引き上げられ、大規模建築物と同じ水準になりました。半年が経ち、いま設計中の案件の多くが新しい基準で審査を受けています。さらに国は、遅くとも2030年度までに省エネ基準をZEB水準まで段階的に引き上げる方針です。2026年9月にはZEB委員会が今後の普及促進の方向性をまとめ、ZEBの到達状況も示されました。来年度の建設・改修計画を考え始めるこの時期に、基準の「いま」と「これから」を整理します。

2026年4月、中規模非住宅の基準が変わった

建築物省エネ法では、2025年4月から原則すべての新築建築物に省エネ基準への適合が義務付けられています。その「合格ライン」となるのが、BEI(Building Energy Index:設計した建物の一次エネルギー消費量を、基準となる建物の消費量で割った値。小さいほど省エネ)です。

中規模非住宅建築物のBEI基準値は、これまで用途にかかわらず1.0でした。2026年4月1日以降に省エネ適合性判定(省エネ適判)を申請する建物からは、用途に応じて次の値に引き上げられています(国土交通省・日本サステナブル建築協会「中規模非住宅建築物の省エネ設計簡単ガイド」より)。

用途引上げ後のBEI基準値
工場等0.75
事務所等・学校等・ホテル等・百貨店等0.80
病院等・飲食店等・集会所等0.85

これは、2024年4月から大規模非住宅建築物(2,000㎡以上)に適用されている水準と同じです。現行基準から15〜25%の強化にあたります。ポイントは、着工日ではなく「省エネ適判の申請日」で適用が決まることです。計画が長引いて申請が遅れた案件では、当初の想定より高い性能が求められる場合があるため注意が必要です。

次の目標は「2030年度までにZEB水準」

今回の引上げは、通過点に過ぎません。第7次エネルギー基本計画(2025年2月閣議決定)では、2030年度以降に新築される住宅・建築物について「ZEH・ZEB基準の水準の省エネ性能の確保を目指す」とされ、省エネ基準の段階的な引上げを遅くとも2030年度までに行うとされています。

前出の国交省ガイドでは、2030年度までに目指す非住宅の水準として、事務所等・学校等・工場等でBEI 0.60、病院等・ホテル等・百貨店等・集会所等でBEI 0.70程度が示されています。BEI 0.80から0.60へ、という差は小さくありません。照明や空調の機器を高効率なものに替えるだけでは届きにくく、外皮(壁・屋根・窓など建物の外周部分)の断熱や日射遮蔽、建物の形や窓の配置といった設計初期の判断が効いてくる水準です。

なお、各用途の具体的な基準値や施行時期は今後の審議で決まります。上記は現時点で示されている目安として捉えてください。

現状はどこまで来ているか

では、実際の建物はどこまでZEB水準に近づいているのでしょうか。ZEB委員会の報告(2026年9月)には、次のような数字が示されています。

  • 国土交通省国土技術政策総合研究所が、2023年度に新築・増改築された床面積300㎡以上のオフィスビル等(11,927棟)を分析した結果では、ZEB基準水準の達成率は床面積ベースで39.0%(2022年度は36.8%)
  • 新築着工面積に占めるZEB化率を用途別に見ると、事務所等は6割近くに達している一方、ホテル等・工場等を除くその他の用途では2割を下回る
  • 都道府県が新築した施設では、令和6年度竣工の202施設のうち38施設(19%)がZEB Ready相当

また、国交省の審議資料では、令和5年度の新築非住宅建築物のZEB水準への適合率は全体で37.4%、規模別には大規模45.0%、中規模19.0%、小規模24.3%と推計されています。今回基準が引き上げられた中規模が、最も低い水準にあります。

事務所では「ZEB水準が当たり前」になりつつある一方、病院や飲食店、集会所などの用途や、中小規模の建物では、まだ大きな差があるというのが実情です。

いま計画する建物で考えておきたいこと

建物は30年、50年と使われます。2026年に設計する建物が竣工するころには、すぐ次の基準引上げが視野に入ってきます。基準は新築時に求められるもので、既存の建物に遡って適用されるわけではありませんが、将来の売却・賃貸や自治体・取引先からの評価では、「当時の最低基準ぎりぎり」の建物は見劣りしやすくなります。

そこで、次のような視点を計画段階で持っておくことをおすすめします。

  1. 目標を「現行基準」ではなく「ZEB水準」に置いて比較する:基本設計の段階で、BEI 0.80の案と0.60前後の案の差額と効果を並べてみると、判断材料が具体的になります。なお、建築物省エネ法の誘導基準(性能向上計画認定などの基準)は、2022年10月にすでにZEB水準へ引き上げられています。
  2. 形と外皮を先に決める:建物の向き、窓の大きさ、庇(ひさし)、断熱の厚さは、竣工後に変えるのが難しい部分です。設備はいずれ更新できますが、外皮は建物の一生を左右します。
  3. 用途の難しさを早めに見極める:病院や飲食店のように、給湯や換気、厨房のエネルギーが大きい用途は、基準値が緩めでも達成が難しくなりがちです。給湯の熱源や排熱回収、換気量の制御など、用途特有の対策を早めに検討します。
  4. 計算法を使い分ける:簡易な「モデル建物法」では評価されにくい工夫も、詳細な「標準入力法」なら反映できることがあります。目標が高いほど、計算方法の選択が結果に影響します。

改修でも「次の基準」を意識する

既存の建物を改修する場合、適合義務の対象は増改築部分に限られます。それでも、空調や照明の更新、屋根の防水更新、窓の改修といった機会は、建物の性能を一段引き上げられる貴重なタイミングです。ZEB委員会の報告でも、改修によるZEB化の課題整理と普及策の検討が、今後の取組として挙げられています。次の更新時期を、2030年以降の水準を見すえて計画しておくと、二度手間を防げます。

まとめ

中規模非住宅の省エネ基準は2026年4月に大規模並みへ強化され、2030年度までにはZEB水準への引上げが予定されています。これから計画する建物は、竣工後まもなく「次の基準」の時代を迎えます。まずは、検討中の計画や更新予定の設備について、現行基準だけでなくZEB水準(BEI 0.6〜0.7程度)との差を確認するところから始めてみてはいかがでしょうか。


想定読者:建物オーナー、自治体の施設担当者、設計者

注:用途別のBEI基準値および2030年度に目指す水準は、国土交通省ガイドの記載に基づきます。2030年度に向けた具体的な基準値・施行時期は今後の審議で決まるため、最新の告示・公表資料をご確認ください。ZEB達成率などの数値は、ZEB委員会報告(2026年9月)および国交省審議資料によります。

参照