同じフロアなのに、窓ぎわの席は「暑い」、奥の席は「寒い」。設定温度を動かしても、どちらかを立てればどちらかが立たない。空調機の能力不足を疑われることの多い症状ですが、原因は機器ではなく、一つの系統に事情の違う場所をまとめてしまったこと ― つまりゾーニング(空調系統の分け方)にあるケースが少なくありません。
熱の事情は場所ごとに違う
外皮に接する周囲部(ペリメーター)は、日射と外気の影響を直接受けます。夏の午後は西日で暑くなり、冬の朝は窓から冷え込む。一方、建物の内側(インテリア)は外の影響が小さく、照明・在室者・OA機器の発熱が支配的です。人の多い事務室では、冬でも冷房を欲しがる場所が出てきます。
方位によっても、負荷が最大になる時刻がずれます。東面は午前、西面は午後。この両方を一つの系統で受け持ち、どこか一室に置いたセンサーで全体を制御すれば、センサーのない側は外れたままになります。
使い方の違いも同じです。連続して使う事務室、人が集まる時間だけ使う会議室、夜間も止められないサーバー室。運転時間の異なる室を同じ系統に載せると、一室のために大きな機器を長く動かすことになります。
快適性の問題であり、エネルギーの問題でもある
ゾーニングが粗いと、暑い側に合わせて冷やし、寒い側では個人用ヒーターや再熱で温め直す、という打ち消し合いが起きます。使ったエネルギーが快適さに変わらないまま消えていく状態です。
省エネ計算の面でも同じことが言えます。建築物省エネ法の一次エネルギー消費量計算のうち標準入力法は、空調ゾーンごとに条件を入力していく方式ですから、実態と合わないゾーニングは計算結果の説得力にもそのまま響きます。設計値と運用実績が食い違う建物では、ここが原因になっていることがあります。
どこから手をつけるか
新築や大規模改修であれば、平面計画の段階が勝負どころです。方位と使い方でゾーンを分け、それに合わせて系統を割り当てておけば、後から制御で取り返す苦労が減ります。
既存建物の場合は、まず「どこで、いつ、どんな不満が出ているか」を平面図に書き込んでみてください。窓ぎわに集中しているのか、特定の方位だけか、時間帯に偏りがあるのか。分布が見えてくると、系統の分け方の問題なのか、センサー位置の問題なのか、当たりがつきます。配管・ダクトをすべて引き直さなくても、温度センサーの移設、風量の再調整、個別機の追加、あるいは席の配置を熱の事情に合わせるだけで収まることもあります。
そして、間仕切りや座席のレイアウトを変えたときは、空調の系統も一緒に確認してください。図面の上では小さな変更でも、その部屋の熱の事情は変わっています。
想定読者:建物オーナー、施設管理ご担当者、自治体の施設ご担当者、設計者
参照:ペリメーター/インテリアの負荷特性、方位別のピークのずれ、運転時間の異なる室を同一系統にした場合の影響は、空調設計の一般的な整理による。標準入力法が空調ゾーン単位で入力する方式である点は、建築物省エネ法に基づく一次エネルギー消費量計算(WEBPRO 標準入力法)の入力体系による。個別建物での改善効果は条件により異なるため、本コラムでは具体的な削減率等の数値は記載していない。