2026年度から、省エネ法(正式名称「エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律」、以下「省エネ・非化石転換法」)の特定事業者は、中長期計画書に「屋根設置太陽光発電」の目標を書くことになりました。さらに2027年度に提出する定期報告書からは、太陽光を載せられる屋根の面積と、すでに載せた面積の報告が加わります。提出期限は毎年7月末。報告の数字をそろえるには、屋根の面積だけでなく、積載荷重や耐震基準、築年数といった情報を建物ごとに確かめる必要があります。来年度の予算編成が始まるこの時期に、自社の屋根を一度「棚卸し」しておくことをおすすめします。
何が始まったのか
省エネ・非化石転換法では、年間のエネルギー使用量が原油換算1,500kL以上の事業者を「特定事業者」として、毎年、中長期計画書と定期報告書の提出を求めています。企業だけでなく、規模によっては自治体、学校、病院なども含まれます。
今回の見直しで加わったのは次の2点です。
| 書類 | 開始時期 | 追加される内容 |
|---|---|---|
| 中長期計画書 | 2026年度提出分から | 屋根設置太陽光の設置に関する定性的な目標 |
| 定期報告書 | 2027年度提出分から | 太陽光を設置できる屋根の面積と、設置済みの面積 |
資源エネルギー庁の審議会資料では、目標の書き方の例として「設置が合理的と判断する屋根の条件を満たす全ての屋根について、2030年度までに屋根設置太陽光発電設備を設置する」「新たに建築及び改築する全ての建築物について、屋根設置太陽光発電設備を設置する」が示されています。数値の目標や設置そのものを一律に義務づける制度ではありませんが、「どの屋根に、いつまでに載せるか」を自社で考え、外に向けて説明することが求められるようになった、と言えます。
背景には、国の第7次エネルギー基本計画(2025年2月閣議決定)で、再生可能エネルギーを主力電源として最大限導入する方針が示されたことがあります。新たに広い土地を確保する必要がなく、発電した電気をその建物で使える屋根は、再生可能エネルギーを増やす手段として期待されています。
報告の対象になる屋根
定期報告で面積を報告する対象は、次のいずれかに当たる屋根です。
- すでに屋根設置太陽光を設置している屋根(1,000㎡未満でも計上できます)
- エネルギー管理指定工場等(事業所単位でエネルギー使用量が一定以上の工場・事業場)にある建屋で、屋根面積から「他の法令で設置できない面積」と「使い方を変えないと設置できない面積」を差し引いた残りが、1建屋で1,000㎡以上のもの
この1,000㎡という線は、建物の種類ごとの平均屋根面積を指定工場等の分布で重みづけした値(約911㎡)を切り上げて決められたものです。
差し引ける面積の例としては、景観条例、建築基準法の高さ制限、日影規制、消防の基準などで設置できない部分や、避難場所・ヘリポートとして使っている部分が挙げられています。また、太陽光を設置する権限がない屋根は対象外です。一方で、建物を所有していなくても、賃借人に設置権限があれば対象になり、所有者と賃借人の両方に権限がある場合は双方が報告します。テナントビルや賃借している倉庫では、契約上の権限を先に確認しておく必要があります。
「載せられる屋根か」を決める情報
報告の中心になるのは、「設置が合理的と判断する屋根の条件」を自社で定め、その条件を満たす屋根の面積と、そのうち設置済みの割合を示すことです。国の資料では、条件の例として次のような項目が挙がっています。
- 積載荷重:屋根が追加で支えられる重さ(例:6kg/㎡以上)。一般的なシリコン太陽電池は架台を含めて相応の重さがあるため、もっとも重要な判断材料です。定期報告では0〜3、3〜6、6〜10、10kg/㎡以上、不明の区分で整理します。
- 耐震基準:1981年6月1日以降に建築確認を受けた「新耐震」か、それ以前の「旧耐震」か。耐震改修をしていない旧耐震の建屋を除く例も示されています。
- 築年数・残存期間:築50年未満か、近い将来に取り壊す予定がないか。
- 屋根の形状・材質:金属の折板屋根は設置しやすく、スレート屋根は除外される例があります。
ここで困るのが、古い建物ほど構造計算書や竣工図が手元にないことです。積載荷重が「不明」のままでは、載せられるかどうかの判断も、将来の目標も立てにくくなります。図面の所在確認、構造の再確認、屋根の劣化状況の点検には時間がかかるため、報告期限から逆算して早めに着手することが大切です。
なお、荷重の小さい屋根でも、軽量型のシリコン太陽電池や、薄くて軽い次世代型太陽電池(ペロブスカイト太陽電池など)であれば設置できる可能性があります。国の資料でも、太陽電池の種類ごとに設置可能性の高い領域を分けて示しています。「今は載らない屋根」も、将来の選択肢として記録しておくとよいでしょう。
今冬にやっておきたい3つのこと
① 建物リストと図面の確認
対象となる建屋を洗い出し、屋根面積(原則は水平投影面積)、建築確認の時期、構造計算書や竣工図の有無を一覧にします。図面がない建物は、この段階で分かるだけでも価値があります。
② 屋根の状態と改修予定の確認
防水や屋根材の更新時期が近い建物は、更新と同時に太陽光を載せるのが合理的です。逆に、太陽光を載せた後に防水改修をすると、パネルの撤去・再設置で余計な費用がかかります。屋根改修と太陽光の計画は、同じ表の上で考えるのが基本です。
③ 導入方法と費用の比較
自己所有で設置するか、初期費用のかからないオンサイトPPA(発電事業者が屋根に設置し、電気を買い取る契約)を使うかで、予算の組み方が変わります。PPAでも、設置の権限と判断を自社が持つ場合は自社の設置として扱われます。国の省エネ診断には、太陽光の導入余地を確認するメニューも用意されています。
ZEBの視点から見た屋根
屋根の太陽光は、ZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)で消費エネルギーを差し引く「創エネ」の中心的な手段です。ただ、ZEBでは、まず断熱や高効率設備で使うエネルギーを減らし、そのうえで創エネを組み合わせるのが基本の順序です。屋根の棚卸しは、屋根の断熱改修や空調室外機の配置見直しと一緒に検討すると、建物全体として無駄のない計画になります。
特定事業者に当たらない企業や施設にとっても、「どの屋根に、どれだけ載るか」を把握しておくことは、電気料金対策や脱炭素の取組を説明するうえで役立ちます。取引先から再生可能エネルギーの導入状況を尋ねられる場面も増えています。
まとめ
省エネ・非化石転換法では、2026年度の中長期計画書から屋根設置太陽光の目標記載が、2027年度の定期報告書から設置可能面積と設置済み面積の報告が始まりました。報告の質は、積載荷重や耐震基準など、建物ごとの基礎情報の有無で決まります。来年7月の提出を待たず、この冬のうちに建物リストと図面の確認から始め、屋根改修や設備更新の計画と重ね合わせてみてはいかがでしょうか。
想定読者:建物オーナー、自治体の施設担当者、省エネ法の特定事業者のエネルギー管理担当者、設計者
注:1,000㎡基準の算定根拠(約911㎡)、目標の記載例、設置可能性の判断条件の例(積載荷重6kg/㎡以上、築50年未満、折板屋根など)は、参照に挙げた工場等判断基準WG資料および中部経済産業局資料に基づきます。条件はあくまで例示で、各事業者が自社の実情に合わせて定めるものです。記入する表の番号や細かな記載方法は年度ごとに更新されるため、提出前に資源エネルギー庁「省エネポータルサイト」の最新の記入要領をご確認ください。
参照
- 資源エネルギー庁「屋根設置太陽光発電の新たな報告制度」(2026年5月26日掲載):https://www.enecho.meti.go.jp/about/special/johoteikyo/rooftop_solar.html
- 経済産業省 中部経済産業局「2026年度における変更点について(省エネ法 特定事業者向け/定期報告書・中長期計画書関係)」(2026年5月):https://www.chubu.meti.go.jp/d33shouene/shoenehou/2026fy_05.pdf
- 資源エネルギー庁「省エネ法に関する措置について」(令和7年度 第1回 工場等判断基準ワーキンググループ 資料4、2025年4月3日):https://www.meti.go.jp/shingikai/enecho/shoene_shinene/sho_energy/kojo_handan/pdf/2025_001_04.pdf
- 資源エネルギー庁「省エネ法 定期報告書・中長期計画書」:https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saving/enterprise/factory/report/