Q&A

1. 本ツールの目的

本ツールは、既存の建築物をZEB(ネット・ゼロ・エネルギー・ビル)に改修する際の概算費用、省エネによるコスト削減額、CO2削減効果を簡易的に計算するためのものです。

通常、既存建築物をZEB化するには、まず改修対象の建物を選び、その建物のZEB化可能性調査を行い、経済性や環境効果を把握してから、設計・施工に進みます。しかし、ZEB化可能性調査の予算を申請する際に、「この建物をZEB化して経済的に見合うのか」「ZEB化にはどのくらい費用がかかるのか」と質問され、調査の予算が確保できないという「卵が先か、鶏が先か」の問題が発生することがあります。

本ツールは、そのような問題を解決するために、まず概算で費用や経済性を示すことで、ZEB化の検討をスムーズに進めることを目的としています。

2. 本ツール利用の注意

  • 本ツールが算出する概算費用、省エネによるコスト削減額、CO2削減効果などの結果は、あくまで参考値としてご利用ください。概算金額は前年度の価格を基にしています。
  • 特に、ZEB改修にかかる費用は、建物の状態、工事の方法(建物を閉鎖して行うか、使用しながら改修するか)、地域、建設市場の状況(大型工事が多い地域では費用が高くなる傾向があります)などによって大きく変動します。
  • そのため、本ツールでの検討後には、必ずZEB化可能性調査を行い、より正確な費用算出や経済性分析を行うことが重要です。
  • また、本ツールはデータが限られているため、地域区分が5~7地域の事務所、および8地域で延床面積2,000㎡未満の事務所のみを対象としています。

3. 本ツール利用へのご協力のお願い

本ツールは、現状では分析に必要なデータが不足しています。事業費は一部の温暖地域の事例から回帰式を算出しており、数値の精度向上が必要です。より正確な数値を提供するため、以下の資料のご提供にご協力いただけませんでしょうか。

提供をお願いしたい資料

  • ZEB改修のBEIを計算した標準入力法のエクセルファイル
  • BELS取得時に提出した建物図面
  • 施工期間(例:20XX年X月~20XX年X月。予定でも構いません)
  • 項目別の概算金額(税抜。入札予定金額でも構いません)
    • 設計費:設計費用
    • 直接工事費
      • 建築工事費:屋根断熱向上にかかった費用、壁断熱向上にかかった費用、開口部断熱向上にかかった費用
      • 機械工事費:空調、全熱交換器設備の更新費用、一般換気設備の更新費用
      • 電気工事費:照明の更新費用、太陽光発電導入費用
    • 間接経費:建築工事・機械工事・電気工事それぞれの共通仮設費、現場管理費、一般管理費

ご協力いただいた団体には、既存建築物ZEB支援プログラムで公開していない資料を提供させていただきます。それにより、独自の分析が可能となります。

データをご提供いただける方は、以下までご連絡ください。

ZEB株式会社
Email: zeb.calcu@zeb.co.jp
TEL: 086-201-1894

4. 既存建築物のZEB化改修を実現するまでの流れ

ステップ1:ZEB化改修する建築物の選定

ZEB化改修によって経済的かつ大きなCO2削減効果が期待できる建物を選びます。選定条件は以下のとおりです。

  • 空調設備の大部分(8割以上)の更新予定が5年以内にある建物
  • 竣工図(建築図、構造図、設備図、電気図)が揃っている建物
  • 1棟全体を更新する建物(ZEBは建物単位で評価され、階ごとや部屋ごとの評価はできません)

ステップ2:概算の経済性の判定

本ツールを活用して、概算費用、省コスト額、CO2削減効果などを算出します。ツールの結果をもとに、ZEB化改修の企画書を作成し、ZEB化可能性調査の予算を申請します。

ステップ3:ZEB化可能性調査の実施

ZEB化可能性調査は非常に重要です。この調査では、具体的な断熱・設備の仕様、BEIの計算、改修費用、省コスト額、補助金額、回収年数、CO2削減効果、建物利用者への影響、実現までのスケジュールなどを検討します。調査結果を関係者間で共有することで、ZEB化の実現を円滑に進めることができます。

ステップ4:ZEB化改修のための詳細設計

ZEB化可能性調査を反映し、詳細な設計を行います。ZEB登録を受けるためには、具体的な設備仕様を想定する必要があります。BEI計算ではJIS規格に沿った消費電力などを入力するため、選定した設備の仕様書が必要です。

しかし、入札時にメーカーの指定ができないため、落札業者により異なるメーカーの設備が選定され、ZEBの性能を満たせなくなる可能性があります。そのため、複数のメーカーでZEB性能を満たせることを確認しながら設計を進める必要があります。

ステップ5:ZEB化改修の施工

詳細設計に基づき、ZEB改修工事を行います。施工中には様々な変更が生じるため、変更のたびにBEIを再計算し、設計で示されたZEB性能を満たすことを確認します。

ステップ6:ZEB登録の再取得

既存建築物のZEB化では、竣工時に設計から内容が変更されていることが多いため、竣工図を用いて再度ZEB登録を受け、完成した建物がZEB性能を満たすことを第三者に確認してもらうことが重要です。

5. 入力項目の説明

以下は、本ツールで入力する項目の説明です。

都道府県
建物が所在する都道府県。
市区町村
建物が所在する市区町村。建築物省エネ法の告示別表第10で定める地域区分を決めるため、旧自治体名が含まれる場合もあります。
建物種類
現在は「事務所」のみです。
延床面積
建物の延床面積を入力してください。2,000㎡未満は中規模、2,000㎡以上は大規模と分類されます。
空調を行う面積割合
空調を行う面積 ÷ 延床面積の値を入力してください。空調と換気を同時に行う部屋は、空調割合に含めます。面積割合が不明な場合は、本ツールの平均値である「0.65」を入力してください。
換気を行う面積割合
換気のみ(空調は行わない)を行う面積 ÷ 延床面積の値を入力してください。空調と換気を同時に行う部屋は、空調割合に含め、換気割合には含めません。面積割合が不明な場合は、本ツールの平均値である「0.13」を入力してください。
※「空調を行う面積割合」と「換気を行う面積割合」の合計が1を超えないようご注意ください。
照明を行う面積割合
照明を行う面積 ÷ 延床面積の値を入力してください。面積割合が不明な場合は、本ツールの平均値である「0.97」を入力してください。
階数(地上)
建物の地上階数を入力してください。塔屋は含みません。
階数(地下)
建物の地下階数を入力してください。地下ピットは含みません。
年間一次エネルギー消費量
年間一次エネルギー消費量を入力してください。単位はGJ/年です。電気の場合は、建築物省エネ法に合わせて「9.76MJ/kWh」で計算してください。
年間光熱費(税込)
年間の光熱水費を税込みで入力してください。単位は千円/年です。
現状の省エネ状況
建物の現状の省エネ設備導入状況を選択してください。悪い:現状のBEIを1.2と仮定します。普通:現状のBEIを1.0と仮定します(通常はこちらを選択してください)。良い:現状のBEIを0.8と仮定します。
予想工期
予定している工期の月数を入力してください。共通費の計算に用います。
補助率
設計、断熱、空調・換気、照明それぞれの補助率を入力してください。補助対象でない場合は「0」を入力してください。補助金額は、各ZEB化のための概算費用 × 補助率 × 補助対象率で計算されます。
補助対象率
断熱、空調・換気、照明それぞれの更新費用のうち、補助対象となる割合を入力してください。撤去費のみが対象外の場合、経験上「0.8」前後となります。不明な場合は「0.8」を入力してください。
共通費、消費税
ZEB対象費用の共通費(共通仮設費、現場管理費、一般管理費)や消費税が補助対象となるかを選択してください。
方位角
『ZEB』、Nearly ZEBに必要な太陽光発電容量を計算するための、太陽光発電パネルの方位角(°)です。南を0°とし、西は90°、北は180°、東は270°となります。不明の場合は南(0°)としてください。
傾斜角
『ZEB』、Nearly ZEBに必要な太陽光発電容量を計算するための、太陽光発電パネルの傾斜角(°)です。水平を0°、垂直を90°とします(計算は10°単位)。不明の場合は0°としてください。
架台タイプ
太陽光パネルを設置する方法を選択してください。屋根置き形:太陽光発電モジュールを屋根と平行に空隙を設けて間接に設置したもの。架台設置形:太陽光発電モジュールを屋根と空隙を設けて間接に設置した太陽電池アレイで、屋根置き形以外のもの。その他:屋根置き形、架台設置形以外(建材一体型や壁面設置等)。
セルタイプ
太陽光パネルの種類を選択してください。結晶系:半導体材料として単結晶シリコン、多結晶シリコンを用いた太陽光発電。その他:半導体材料として単結晶シリコン、多結晶シリコン以外を用いた太陽光発電。
パワコンの効率
パワーコンディショナの定格負荷効率を入力してください。0~1の間の小数になります。初期値は0.923です。
ご利用について(立場・地域・利用目的)
利用状況の集計と報告のために、計算のたびに選んでいただきます。計算の内容(入力した数値と計算結果。市区町村は除きます)は暗号化して保存し、お名前・会社名・連絡先・IP アドレスは保存しません。

6. 計算結果の説明

計算結果は「まとめ」「詳細結果」「経年分析」「計算条件」のタブに分けて表示します。計算結果は、あとから開き直すことはできません。残すときは「印刷・PDF で保存」(印刷の画面で PDF を選べます)か「CSV をダウンロード」をお使いください。

まとめ

実質回収年数、ZEBの掛かりまし費用・掛かりまし省エネ額、45年後の累計支出の差を大きく表示し、その下に言葉での説明、経年コスト推移グラフ、経済性の表、導入費と一次エネルギー消費量のグラフ、『ZEB』・Nearly ZEBに必要な太陽光発電容量、ZEBのための指標を表示します。

計算結果(経済性)

概要:ZEB化可能性調査の費用データを回帰分析して式を作成しています。その式に入力された数値を当てはめて、建物に合わせた概算費用を算出しています。省エネ量・省エネ額は、ZEBを実現した建物のBEIを用いて、入力された一次エネルギー消費量や光熱水費から、建物に合わせて計算しています。補助金額は、入力された補助率を用いて計算しています。

本ツールで示される経済性分析は、ZEBが実現する際の費用や省エネ額、回収年数を計算します。ZEBを実現するための仕様は提示しません。ZEB化可能性調査を行い、具体的な仕様やその費用を算出することが必要です。

説明:ZEB改修の概算での実質回収年数を表示します。一般的な空調機の使用期間が15年程度の建物が多いため、実質回収年数が15年より低いと、経済性があると判断しています。

省エネ量 GJ/年
改修による年間省エネ量。
省エネ額(税込)千円/年
年間の省エネ額。
更新費用(税込)千円
更新にかかる概算費用。
補助金額 千円
概算の補助金額。
実質費用 千円
更新費用-補助金額。
ZEBの掛かりまし費用(税込)千円
実質費用(ZEB改修)-実質費用(標準改修)。
ZEBの掛かりまし省エネ額(税込)千円/年
省エネ額(ZEB改修)-省エネ額(標準改修)。
実質回収年数 年
ZEBの掛かりまし費用 ÷ ZEBの掛かりまし省エネ額。補助金を含めると初めから ZEB改修の方が安い場合は「回収不要」、掛かりまし省エネ額が 0 の場合は「-」と表示します。

計算結果(ZEBのための指標)

概要:ZEBのための指標は、モデル建物法で報告されている建築物の中でZEB(BEI0.5以下)を達成している建築物の断熱や設備のデータを集計した値を示しています。

参考資料:国土技術政策総合研究所資料No.1269 非住宅建築物の外皮・設備設計仕様とエネルギー消費性能の実態調査 -省エネ基準適合性判定プログラムの入出力データ(2022年度)の分析- 2024年1月

説明:ZEB設計するための指標になる値を示します。ZEBの値は、入力した建物に近い建物の平均値になります。この指標を目安に断熱や設備仕様を決めるとZEBになりやすいです。

※「-」が表示されることがあります。これは、該当する建物で平均値が得られない場合です。特にZEBでは、件数が少ないため表示されやすくなります。

熱貫流率 W/(m2K)
モデル建物法の評価において外皮性能を「評価する」と選択し、かつ、外壁面積が0ではない建築物を対象として、当該建築物の平均熱貫流率(各部位の熱貫流率を外壁面積で重み付けして平均した値)。
冷房期の平均日射熱取得率
当該建築物の窓の平均日射熱取得率(各窓の日射熱取得率を窓面積で重み付けして平均した値)。
床面積当たり開口率
モデル建物法の評価において外皮性能を「評価する」とした建築物を対象として、開口部の面積を計算対象床面積で除した値の平均値。
床面積あたり冷房能力 kW/m2
熱源機器の定格冷房能力の合計を床面積で除した値の平均値。
床面積あたり暖房能力 kW/m2
熱源機器の定格暖房能力の合計を床面積で除した値の平均値。
※床面積は、建築物全体の延べ面積ではなく、建物用途毎の計算対象床面積であることに注意が必要です。計算対象外の延床面積は含まれていません。
換気設備の単位送風量あたりの消費電力 W/(m3/h)
モデル建物法の評価において機械換気設備を「評価する」とした建築物を対象として、機械換気設備の単位送風量あたりの消費電力[W/(m3/h)]の平均値。
照明器具の単位床面積あたりの消費電力 W/m2
モデル建物法の評価において照明設備を「評価する」とした建築物を対象として、照明対象床面積あたりの照明器具の消費電力[W/m2]の平均値。
給湯設備の熱源効率(一次エネルギー換算)
給湯設備の熱源効率を、電力の一次エネルギー換算値(9.76MJ/kWh)を用いて計算した値の平均値。

『ZEB』、Nearly ZEBに必要な太陽光発電容量

概要:『ZEB』、Nearly ZEBに必要な太陽光発電容量を計算します。ここで示される太陽光発電の設置にかかるコストや発電による省エネ額は、計算結果(経済性)やグラフに含まれていません。ご注意ください。

太陽光発電1kWの年間発電量(kWh/(kW・年))
入力された傾斜角などから推計される太陽光発電容量1kWあたりの年間発電量。太陽光発電量の計算プログラムは、国土技術政策総合研究所 主任研究官 宮田征門様作成のプログラムを活用しています。
『ZEB』に必要な太陽光発電(kW)
『ZEB』の達成に必要な太陽光発電の発電容量(kW)。
Nearly ZEBに必要な太陽光発電(kW)
Nearly ZEBの達成に必要な太陽光発電の発電容量(kW)。

詳細結果

経済性の内訳(設計費・建築工事・機械工事・電気工事)、標準入力法上の延床面積あたり一次エネルギー消費量、BEIと実際の一次エネルギー消費量、設計費の内訳を表示します。

経年分析

ZEB改修と標準改修について、改修後45年目までの累計支出(改修費、15年目・30年目の設備更新費、光熱費)を比べます。2回目以降の更新では補助金は受けられない前提で、断熱は初回の改修で済むものとしています。グラフと年ごとの表で、どちらが経済的に有利かを確かめられます。

計算条件

計算に使った入力の値と、市区町村・延床面積から決まった地域区分・年間日射地域区分・規模を表示します。

内閣府総合科学技術・イノベーション会議の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第3期「スマートエネルギーマネジメントシステムの構築(JPJ012207)」(研究推進法人:JST)(以後、本研究)を、東京大学生産技術研究所エネルギーシステムインテグレーション社会連携研究部門の岩船研究室が実施しています。東京大学生産技術研究所より、弊社が「ZEB推進のための支援ツールの開発」の外注を受け、本ツールを公開しています。

ZEB株式会社では、ZEBに関する様々な情報提供をしています。ぜひホームページ(ZEB株式会社 | Beyond Zero Emission)もご確認ください。